リフクラ
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クライアントが変わったかどうかを、どう確かめていますか

課題への答え公開 English version

「この人、変わってきたな」

セッションの途中で、ふとそう感じる瞬間があると思います。言葉の出方が違う。前なら止まっていたところを、自分から先へ進んでいく。表情も違う。

ただ、その変化を何で確かめていますかと聞かれると、答えにくいのではないでしょうか。

コーチング、カウンセリング、キャリア面談。人の内面に伴走する仕事には、やったことの成果が数字にならないという共通の難しさがあると思います。契約が続いている、更新された、紹介してくれた——それは結果であって、変化そのものではありません。守秘義務があるから事例も出せない。満足度を聞けば高い数字は返ってきますが、それは「良い時間だった」であって「変わった」ではない。

いちばん大事にしているものが、いちばん確かめにくい。この仕事の難しさは、その一点にある気がします。

私たちも、同じところで止まっています

先に、こちらの状況を書いておきます。

私たちは内省アプリ「リフクラ」を作っていますが、このアプリを使うと人が変わる、という証明は持っていません。書くことについての研究はありますが、効果の大きさは対象と条件で報告が分かれていますし、自社サービスの効果を測った研究があるわけでもありません。

数字を出そうとすれば、出せなくはありません。継続率、記入日数、満足度。ただ、どれも「使っている」ことの指標であって、「変わった」の指標ではないと思います。

それでも、確かめる手立てがまったくないとも思っていません。手がかりは、たぶん数字ではないところにあります。

変化は、言葉のほうに出る

書かれた言葉そのものを調べた研究があります。

ペネベーカーらは、つらい出来事について書いた文章を分析し、どんな言葉を使った人がその後よくなっていたかを調べました。1997年の報告では、因果を表す言葉(だから、なぜなら、理由)と気づきを表す言葉(分かった、気づいた、理解した)の使用が多い人ほど、その後の身体的な健康が良くなっていました。ただし精神的な健康との関連は見られず、効果の出方は一様ではありません。

2003年には、キャンベルとペネベーカーが別の角度から分析しています。こちらで関連が見られたのは、代名詞の使い方の柔軟さでした。「私」の視点に留まり続けるのではなく、自分と他者のあいだを行き来している文章のほうが、健康の指標が良かった。

まとめると、変化していく過程で起きていたのは、断片的な感情の吐き出しが、筋の通った話に変わっていくことでした。そしてそれは、書かれた言葉の側から観測できた、ということです。

半年前は「うまくいってないです。向いてないのかも」と短く終わっていた答えが、いまは「面談で言われた一言が、ずっと引っかかっていて。たぶん、評価よりも納得して進めたいんだと思います。だから、あの進め方が苦しかった。そう気づきました」と長くなり、「たぶん」「だから」「気づきました」といった言葉が混ざっている
半年前は「うまくいってないです。向いてないのかも」と短く終わっていた答えが、いまは「面談で言われた一言が、ずっと引っかかっていて。たぶん、評価よりも納得して進めたいんだと思います。だから、あの進め方が苦しかった。そう気づきました」と長くなり、「たぶん」「だから」「気づきました」といった言葉が混ざっている

ここで正直に線を引いておきます。これらは健康の指標との関連を調べたものであって、「内省の深さ」を測る物差しとして検証されたわけではありません。ですから、これを点数にすることはできません。

できるのは、読み返したときに気づける手がかりになる、というところまでです。

見るところ変化として現れることがあるもの
量ひとつの問いに対して、書ける長さ
つなぎ「だから」「なぜなら」が増えてくる
気づき「いま気づいたのですが」「そう考えると」
主語自分だけでなく、相手や周囲が入ってくる

伴走している方なら、たぶん実感として持っておられると思います。同じ問いを出しても、返ってくる言葉の質が変わる。この記事で言いたいのは、その実感が気のせいではなさそうだ、ということです。

だから、比べられる形で残す

言葉に出るのだとすれば、あとは過去の言葉が残っていて、並べて読めるかどうかの問題になります。ここは道具の側で引き受けられる部分です。

リフクラにはペアリフレクションという機能があります。二人で同じ内省セッションを画面共有しながら進めるもので、テーマを決め、構造化された問いに沿って進み、途中で聞き手からフィードバックを返し、最後にAIがまとめます。標準で30分ほどの流れです。

このセッションの記録は、二人ともの手元に残ります。履歴はテーマのキーワードで絞り込めて、古い順に並べ替えられます。つまり、「キャリアの迷い」で絞って古い順に並べれば、同じテーマの初回と直近を、並べて読むことができます(さかのぼって読めるのはプレミアム以上のプランです。無料プランでは直近1ヶ月分になります)。

半年前の自分がその問いに何と答えたか。いま同じ問いに何と答えるか。その差は、こちらが指摘しなくても、本人が読めば分かります。

やっているのは、そこまでです。文字数の推移を出したり、語彙の変化を図にしたりはしません。並べて読める形にしておく、それだけです。

深さを数値にすることにも、踏み込まないつもりでいます。内省の深さが点数になった瞬間、それはクライアントを採点する道具になります。伴走のために作ったものが評価のために使われるのは、たぶんいちばん避けたいことです。

見えないものは、見えないまま

線引きをはっきりさせておきます。

リフクラでクライアントが日々書いている記録は、伴走している方には見えません。書いた内容も、書いた頻度も渡りません。両者に残るのは、一緒にやったセッションの記録だけです。

何を持ってくるか、どこまで話すかは、本人が決めることだと考えています。日常が全部見えたほうが支援しやすい場面はあると思いますが、それをやると、書く場所が「見られている場所」になります。そうなったときに失われるものの方が大きいと判断しました。

本人が、自分の言葉で言うとき

結局のところ、更新の理由になるのも、この仕事を続けられる理由になるのも、本人が「変わってきた気がする」と自分の口で言う瞬間なのではないかと思います。

そのとき、隣に半年前の自分の言葉が並んでいれば、それは実感ではなく確認になります。証明でも測定でもありませんが、本人にとっていちばん納得できる形の証拠ではあるはずです。

私たちが道具の側でやろうとしているのは、そこまでです。何を問うか、返ってきたものをどう扱うか、いまその人に何が必要か——それは専門職の仕事のままです。

無料で使いはじめられるので、まずご自身の内省の道具として試してみて、問いの立て方や返ってくる言葉に違和感があれば、そのまま聞かせてください。人の心を預かる仕事の基準に合っているかどうかは、その仕事をしている方の目でなければ判断できません。⁠ 使わないという判断も、当然あると思っています。


参考にした研究

  • Pennebaker, J. W., Mayne, T. J., & Francis, M. E. (1997). Linguistic predictors of adaptive bereavement. Journal of Personality and Social Psychology, 72(4), 863–871.(洞察・因果に関する語の使用と、その後の身体的健康との関連。精神的健康との関連は見られなかった)
  • Campbell, R. S., & Pennebaker, J. W. (2003). The secret life of pronouns: Flexibility in writing style and physical health. Psychological Science, 14(1), 60–65.

いずれも文章と健康の指標との関連を調べた研究であり、内省の深さを測る尺度として検証されたものではありません。また、リフクラという特定のアプリの効果を検証したものでもありません。