振り返りの問いは、作らなくていい。選べばいい

「今日を振り返ろう」と思ってノートを開いて、そこで止まったことはないでしょうか。
何を書けばいいかは分かる気がするのに、いざとなると出てこない。
「今日はどうだったか」と自分に聞いてみても、返ってくるのは「まあ、普通」くらいで、それ以上進まない。
これは書く力が足りないというより、問いがないからかもしれません。
問いがないと、振り返りはぐるぐるになりやすい
問いを立てずに「今日のことを考えよう」と目を閉じると、たいてい気になっていることが勝手に浮かんできます。うまくいかなかった場面、言われた一言、明日の面倒な予定。
心理学の研究でも、自分について考えることのうち、達成できていない基準と現状をただ比べ続ける思考(brooding)は抑うつなどと結びつきやすく、問題の理解に向かう思考(reflection)とは区別されています。前者は同じ場所を回り続け、後者は前に進みます。
この二つを分けるものの一つが、問いです。
「なんでこうなんだろう」だけで回っているとき、そこには進む方向を決める問いがありません。
この「堂々巡りになる内省」と「前に進む内省」の違いそのものについては、内省しても堂々巡りになる人へ ― 効果が出る振り返りの3つの条件 に詳しく書かれています。ここから先は、では今夜どの問いを使うのかという話に絞ります。
良い問いには、順番がある
問いを選ぶうえで、いちばん役に立つ考え方は「順番」です。
私たちが使っているのは、ORIMD(オリムド)という枠組みです。国際的な対話技法ORID(Objective / Reflective / Interpretive / Decisional)に、日本語で内省するときに欠かせない「意味(Meaning)」を加えたもので、内省を5つの角度で進めます。
- 事実(Objective)— 何があったか。見たこと、聞いたこと、起きたこと
- 感情(Reflective)— そのとき、どう感じたか
- 解釈(Interpretive)— それはどうしてだと思うか
- 意味(Meaning)— 自分にとって、それはどんな意味があるか
- 決定(Decisional)— では、どうするか
5つの名前を覚える必要はなくて、順番を飛ばさないことのほうが効いてくるように思います。
振り返りが浅くなるときは、いきなり「決定」から始まっていることが多いように思います。「明日はもっと早く動こう」「次はちゃんと言おう」。反省としては正しく見えますが、事実も感情も確かめないままだと、次に同じ場面が来たときに同じところへ戻りやすくなります。
逆に、事実と感情のあたりで回り続けているのが、さきほどの「ぐるぐる」かもしれません。入口(事実)から出口(決定)まで、順番に通ってみる。それだけで、進みはじめることがあります。
今日の状態で、使う問いは変わる
問いのカタログを持っていても、疲れた夜に上から順に選ぶのは大変です。
その日がどんな日だったかから選ぶと、入る角度はだいたい絞れてきます。
| 今日はこんな日 | どこから入るか |
|---|---|
| うまくいかなかった | 事実から。何が起きたかを、評価抜きで書き出す |
| 気持ちがざわついている | 感情から。名前をつけるところまでで十分 |
| 何もなかった | 事実をひとつだけ。小さくていい |
| 決めたいことがある | 意味から。決定を急がず、自分にとっての意味を先に |
| 良いことがあった | 解釈へ。なぜうまくいったのかは、失敗より見落とされやすい |
以下、そのまま使える問いを並べます。全部やらなくて大丈夫です。1日1〜2問で足ります。
うまくいかなかった日
- 今日、何が起きたか。順番に、3行くらいで
- そのとき、いちばん強かった気持ちはどれか
- あとから思うと、どこが分かれ目だったか
評価の言葉(だめだった、失敗した)は、事実を書き終えるまで保留にしてみてください。事実と評価が混ざると、事実のほうが小さく見えてしまいがちです。
気持ちがざわついている日
- いまの気持ちに名前をつけるとしたら、何か
- その気持ちは、体のどこにあるか
- 誰かに一言だけ伝えられるとしたら、何と言うか
理由が分からなくても構いません。「理由はわからない」まで書けていれば、記録としては十分だと思います。
悩みが深くて一つの角度では動かないときは、視点を変えて何度も切り口を変える方法があります(悩みが深いときの内省は視点を変えて様々な切り口で考えることがコツ!)。
何もなかった日
- 今日、いちばん長く時間を使ったのは何か
- 少しでも気分が動いたのは、どの瞬間か
- 明日に持ち越したくないものは、何かあるか
「何もなかった」の中身は、「書くに値することがなかった」だったりもします。基準を下げてみると、何かしら出てくることが多いです。
決めたいことがある日
- この選択は、自分にとって何を守るものか
- 5年後の自分が見たら、どちらを選んでほしいと思うか
- 決めるために、まだ足りない情報は何か
決定の前に意味を通ると、選択が「損得」だけに寄りにくくなります。「解釈」と「意味づけ」は混ざりやすいので、区別を知っておくと問いが選びやすくなります(同じ出来事なのに受け取り方が違うのはなぜ?「解釈」と「意味づけ」の違い)。
良いことがあった日
- うまくいった要因を3つ挙げるとしたら
- そのうち、自分がやったことはどれか
- 次に再現するとしたら、何が要るか
うまくいった日は振り返らずに流してしまいがちですが、再現できる形にできるのは、うまくいったときだけかもしれません。
問いは、自分で作らなくていい
ここまで問いを並べてきましたが、いちばん伝えたいのは「毎晩、自分に合う問いを自分で選ぶ必要はない」ということです。
前の記事に書いたとおり、続く書き方は「何を書くか」が先に決まっていました。問いも同じで、決まっているほど続きやすくなります。手帳の余白に、今日の5問を書き写しておくだけでも十分だと思います。
私たちが作っている内省アプリ「リフクラ」は、そこを道具の側で引き受けています。
- 朝は「今の気持ち・その理由・どんな一日にしたいか・今日やりたいこと」、夜はその日を振り返る問いが、開くと表示されます
- もっと深く掘りたい日は、テーマを選ぶと、ORIMDの順番に沿った問いが順に出てきます
- 書き終えると、AIが内容を受けとめて短くコメントします。ただし「〜すべき」「〜する必要がある」といった断定表現は、プレッシャーになるので使わない決まりにしています
問いを選ぶ手間がなくなると、残るのは「書く」だけになります。続かなかった理由は、案外書く前のところにあるのかもしれません。
参考にした研究
- Treynor, W., Gonzalez, R., & Nolen-Hoeksema, S. (2003). Rumination reconsidered: A psychometric analysis. Cognitive Therapy and Research, 27(3), 247–259.(反すうを brooding と reflection に分ける議論)
これは「自分について考えること」についての研究であり、リフクラという特定のアプリの効果を検証したものではありません。
